中国で急拡大している感染症の背景にある、致死性ウイルスへの懸念が高まっている。数百万人を隔離するといった拡大防止策にもかかわらず、新型コロナウイルス（2019-nCov）が引き起こすウイルス性肺炎の患者や死者は急増している。
科学者や保健当局者らの間でこれまで主に分かっていることをまとめた。
新型コロナウイルスはどれくらい危険か
2002年に中国で発生し、03年に世界に広まった重症急性呼吸器症候群（SARS）より致死性は低いとみられる。SARSでは感染者の約10％が死亡したが、新型ウイルスへの感染が確認された人のうち死亡したのは約3％だ。死者の多くは高齢だったか、糖尿病など他の疾患があった。
しかし、新型ウイルスはSARSより簡単に人から人に広がりかねないことを、初期の疾病モデリングの一部は示唆している。
新型コロナウイルスはどこから来たか
コウモリが発生源のようだと科学者らは話している。だが、どこからどう人に飛び火したのか正確には分かっていない。保健当局者らは、武漢の動物・海鮮市場が流行の発生源だと考えている。医学誌ランセットによると、当初の41人のうち27人は同市場と何らかの接点があった。だが12月1日と同10日に発症した最初の4人のうち3人は、同市場との接触はなかったと述べている。
新型ウイルスの広がりやすさ
インペリアル・カレッジ・ロンドンの疾病モデリング専門家らによる先週の推計によると、感染者は平均2.6人にウイルスをうつしている。世界保健機関（WHO）は先週、初期の兆候として、これが1.4～2.5人だと発表している。この率は一部のインフルエンザウイルスより高いが、はしかより低い。はしかでは1人から12～18人にウイルスがうつる可能性がある。
中国渡航は安全か
米国務省は中国渡航について考え直すよう市民に促してきた。感染リスクがあるほか、多くの都市で検疫が実施されているからだ。米疾病対策センター（CDC）は、必要のない中国渡航を全て避けるよう勧告。渡航する人に対しては、病気の人、動物、動物市場、そうした市場で得た未調理の肉を避けるべきだとしている。
航空各社は、中国発着または中国経由のフライトを予定していた人に変更を認めている。米航空会社は変更手数料の免除を中国以外には適用していない。
中国で働く外国人や訪中予定者は計画を変更すべきか
中国にある企業は社内での拡散を防ごうとしている。北京を拠点とする小米（シャオミ）は武漢を訪れた人について、症状がないことを確認するため出社前に14日間待機するよう要請した。武漢在住者は在宅勤務にすべきだと、スタッフ宛の電子メールで伝えている。
人気動画投稿アプリ「TikTok（ティックトック）」を運営する北京字節跳動科技（バイトダンス）は中国本土の従業員に在宅勤務を促した。深センのテンセントホールディングスは地元スタッフに同様の指示をした。
無症状の人からウイルスがうつるか
うつり得る。しかし、現時点ではほとんど何も分からない。マカオの当局によると、熱も咳（せき）もない15歳の武漢市民が同地でコロナウイルス検査を受けたところ、陽性反応が出た。ランセット誌の科学者らの報告によれば、症状のない10歳の少年にコロナウイルスが見つかった。ただ、少年の家族は具合が悪かった。
中国国民健康委員会のトップによると、症状のない（なかった）患者がウイルスを広めることはあり得る。
米CDCによると、症状が出る前に人にうつす可能性を示す証拠はまだないが、同センターは米国での状況を注視している。
どんな症状か
ウイルスに感染するのは下気道。症例報告によると、当初の症状は発熱、咳、痛み。それから息切れや肺炎の合併症に発展することがある。重症にならない患者もいる。患者によっては肺炎の症状が急速に深刻化する。
最初は熱がない患者や、「歩く肺炎」になる患者もいる。これは、入院するほど悪くないため、他人に感染を広めかねないケースだ。
潜伏期間は何日か
CDCによると、感染後2～14日間。
検査方法はあるか
保健当局者の開発・配布している診断検査が、新型コロナウイルスや他の感染症の有無を確認するのに使われている。診断される人の数が増えている一因に、検査できる場所の増加がある。
最もリスクが高いのはどのような人か
全ての年齢の大人が感染している。最初に感染した41人のうち4分の3近くは男性だった。41人のうち死亡した患者の多くは60歳超で、糖尿病など他の疾患を抱えており、病状が悪化した時に入院した。子供の感染報告はほとんどないが、状況は変わりうる。
新型ウイルスは変化しているか？
していない。WHOとCDCによると、遺伝子学的には今のところ安定している。
行われている感染拡大防止策は何か
中国は武漢や他の数都市で閉鎖や隔離が行われおり、数百万人に影響が及んでいる。当局は、患者を隔離・治療するとともに感染経路を調査するための、大規模野外病院も武漢に設営中だ。だが、こうした措置にもかかわらず拡大ペースは鈍っていない。
閉鎖前に武漢を離れた人は多い。新型ウイルスは大勢の人が移動する中国の休暇シーズンを直撃した。武漢（人口1100万人）の市長は26日、500万人が市を離れたと述べた。ウイルスから逃げた人と休暇で出掛けた人の割合は不明だ。
米国は武漢から到着した旅客に対し、5つの主要空港でスクリーニングを実施。熱がある人は他の症状のスクリーニングを受ける。当局はスクリーニング拡大を検討中だが詳細は明らかにしていない。
マスクで防げるか
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保健専門家やマスクメーカーによると、ウイルスの侵入を防ぐ、あるいは他人に感染させないのは、ある独立機関の認証を受けた（呼吸器系）保護マスク「N95」を適切に使った場合だけだ。紙やポリウレタンフォームのマスクは、感染因子を運ぶ、より小さな粒子は除去しない。
コロナウイルスの治療薬はあるか
新型ウイルス用に承認された薬品やワクチンはない。どの抗ウイルス治療薬も、コロナウイルスへの有効性は証明されていない。ただ、武漢のある病院が2種類の薬の配合剤（米国でのブランド名は「カレトラ」）を使った治験を開始した。サウジアラビアで中東呼吸器症候群（MERS）患者に試験的に使われたものだ。通常は抗HIV薬として使われている。さらに、ワクチンメーカー数社が新型ウイルスをターゲットにした製品を開発中。
中国からの輸入品はウイルスを運ぶか
CDCによると、それはなさそうだ。コロナウイルスは一般に、無生物の表面では長く生きないという。
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January 29, 2020 at 09:58AM
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