近年、問題視されているオーバーツーリズム。旅行客の著しい増加で、地域の環境や住民の生活が圧迫される中、対策として観光庁が新たな取り組みを開始した。それが「サステナブルな旅AWARD」だ。観光地が持続可能かつ活性化するような旅行プランを募り、ロールモデルにふさわしい商品を表彰した。
2023年に新設された、観光庁主催の「サステナブルな旅AWARD」。同年10月27日に、「ツーリズム EXPO ジャパン 2023（大阪・関西）」にて表彰式が行われた
訪日外客数はコロナ禍以前に回復
2023年11月2日、その年の世相を表す言葉を表彰する「ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされたキーワード計30語が発表された。
その中の1つに「オーバーツーリズム」が挙がった。オーバーツーリズムとは、特定の観光地に訪問客が集中することで、地域住民の生活や環境が圧迫されたり、結果的に観光客の満足度まで著しく低下したりする現象を指す。日本では「観光公害」とも表現され、ゴミのポイ捨てや騒音、バスやタクシーなど交通機関の混乱、私有地への立ち入りなどが、その実害として指摘されている。
日本政府観光局の推計によれば、23年9月の訪日外客数は218万4300人。新型コロナウイルス禍前の19年同月と比べて96.1％まで回復している。
さらに直近では、格安航空会社の普及や、新興国の中間層を中心とした旅行需要の拡大も追い風となり、シンガポールをはじめとした東南アジアや、米国、カナダなどの米州からの来日客が急増。円安が拍車をかけ、今後もより多くのインバウンド客が押し寄せることが予想される。
23年9月の訪日外客数。シンガポールをはじめとした東南アジア、また米国やカナダを含む米州などにおいて訪日外客数が増加した（出所／日本政府観光局、23年10月18日公開のリリース）
「観光立国」を掲げる日本にとって、インバウンド拡大による経済効果や雇用創出はうれしい半面、オーバーツーリズムはより深刻な課題となってくる。
こうした中、政府や各自治体は、オーバーツーリズム抑制に本腰を入れ始めた。23年10月18日に行われた観光立国推進閣僚会議では、「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」をまとめた。具体的には、交通機関の混雑抑制を狙った変動運賃制、私有地への立ち入りを防ぐための防犯カメラの設置案などを含む。
これとは別に、京都では地下鉄の主要駅にマナーを呼びかる電子看板を設置したり、沖縄県宮古島では、本島へ渡るフェリーの料金を100円上乗せしたりと、地域独自の対策も行われている。
阿蘇山や奥飛騨をめぐるツアーが受賞
観光庁も、オーバーツーリズム対策の一環として、23年から「サステナブルな旅AWARD」を新設した。本アワードは、観光客と地域住民の調和を図り、“住んでよし訪れてよし”の観光モデル浸透を目的に掲げるもの。本年は、23年4～8月にかけて、全国の国内旅行事業者からツアー企画を募り、その中から持続可能な観光の国際基準に基づいて評価を下した。
23年10月27日の表彰式では、大賞や特別賞など計7点を発表。阿蘇カルデラ周辺の草原で行われるサイクリングツアーや、東日本大震災に直面した岩手県釜石市をめぐる海山体験ツアー、台東区を舞台にみこしや太鼓といった伝統工芸品を堪能できるツアーなどが選ばれた。
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December 03, 2023 at 10:00PM
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