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【上】 自然の中 ビジネスの種 北陸オンリーワン起業 - 中日新聞

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 春から夏にかけ、陽光にきらめく水田。コメ農家は水位と水温の管理に気を配る。規模によっては見回りに六〜八時間かかる作業だが、富山県滑川市の企業「笑農和(えのわ)」が省力化するサービスを生みだした。

 スマートフォンで水田の水位と水温を確認し、遠隔操作で水門を開閉する「paditch(パディッチ)」。約五十の農家・法人が導入し海外からも引き合いがある。大手二社も追って参入したが、導入率はまだ三社で国内0・2%。下村豪徳(かつのり)社長(43)は「市場をつくることが第一ステップ」と話す。

 コメ農家の長男。IT企業で製造業の効率化を図るエンジニアとして十数年働き、その視点で農業の課題を探った。長年の経験と勘が頼りとされるコメ作り。質を保ち、次代に引き継ぐにはIT化が不可欠と考え、二〇一三年に起業した。

水田の水量管理をスマートフォンで操作できる水門について語る笑農和の下村豪徳社長=富山県立山町で(泉竜太郎撮影)

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 当時の北陸は、起業家の成長を後押しする制度が乏しかった。都内のビジネスコンテストでアイデアを売り込み、大企業の補助金を得て一五年に試作機を完成させた。だが、ITに疎い農家への売り込みに苦戦。資金繰りに困った。「相談先がなく、銀行も融資してくれなかった。そんな時に自治体が製品の販売やPRを応援してくれたら」

 福井県坂井市の企業「フィッシュパス」は、漁協が発行する川釣りの券(遊漁券)をインターネットで二十四時間買えるアプリを開発した。西村成弘(なるひろ)社長(44)は「地方でしかできない自然を扱うビジネス」と語る。

 河川の保全は遊漁券の収益でまかなわれる。だが、釣り客が多い早朝に券を買えない人が多かった。その課題をアプリで解消。釣り人は河川情報も得られ、漁協側は衛星利用測位システム(GPS)で釣り人の位置を確認できる。福井県越前市の日野川漁協では一八年にアプリを本格導入し、遊漁券収益が倍増した。

 西村社長は株式公開(IPO)を視野に入れるが、上場などに精通した専門家が集中するのは東京だ。

 二社のように新たな市場を開拓する新興企業はスタートアップ企業といわれる。その成長曲線は二、三年の赤字期間を乗り越え、急成長する「Jカーブ」に例えられることが多い。政府は「世界で戦い、勝てるスタートアップ企業」を育てようと、全国約一万社から優良企業を認定し集中的に支援する。

 認定は現時点で百四十社だが、北陸三県はゼロだ。「関東に集中し、次いで京阪神や九州に多い」(中部経済産業局)。スタートラインに立つ北陸は情報も人材も資金も集中している大都市圏に立ち向かっていく。

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 革新的な技術やサービスを生みだし、急成長を目指すスタートアップ企業。地域経済をけん引する力にと、北陸の自治体や老舗企業も支援に乗り出した。社会課題の解決や雇用の創出につながるビジネスの芽をどう育てていくか。前線を追った。(この連載は押川恵理子、蓮野亜耶が担当します)

【メモ】スタートアップ企業=新たな市場を開拓する新興企業。経済産業省によると、国内に約1万社ある。創業10年以内で、企業価値か時価総額が10億ドル以上の未上場企業は「ユニコーン」と呼ばれる。米国の調査会社CBインサイツによると、今月4日時点でユニコーンは世界で452社で、米国、中国の企業が大半を占める。日本はスマートニュースなど3社にとどまり、政府は「2023年までにユニコーン20社」を目標に掲げる。

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March 28, 2020 at 08:01AM
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