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社労士たちが首をかしげる「通達ビジネス」 入手した「行政文書」売り物に高額で労務対策を指南 - 東京新聞

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 全国の労働基準監督署が労災を認定する際の労働時間について、厚生労働省が昨年、算定基準を厳しくするよう通達していた問題を本紙は報じた。取材を続けると、今度はコンサルタント会社などが情報公開制度を使って入手した通達を売り物に、社会保険労務士らを対象とする有料セミナーを開いていることが分かった。通達は規制や許認可を通じ企業活動に影響を与える。そこに「通達ビジネス」が生まれる構図ができあがっていた。(久原穏)

◆受講料1万6500円

「厚労行政の内部文書をご提供」とうたい、情報公開請求で入手した資料を販売している『行政文書情報販売店』のホームページ

「厚労行政の内部文書をご提供」とうたい、情報公開請求で入手した資料を販売している『行政文書情報販売店』のホームページ

 「×××(社名)が開示請求により入手した『労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集』(厚生労働省労働基準局補償課作成)を元に、第1部では…」

 あるコンサルタント会社のホームページをみると、厚労省の通達を独自に入手したとPRする文字があった。そこにはセミナーのセールスポイントを説明する文言も並んでいた。

 セミナーは講師が通達のポイントを解説。具体的な事象に基づいて労災給付にかかる認定の考え方と労働基準監督署の調査の流れ、留意点を踏まえた講義をする―といった内容だ。

 主催は社労士法人が設立した中部地方のあるコンサルタント会社。全国の社労士や税理士ら1400人の会員がいて、昨年10月に厚労省の具体的な通達名を掲げたオンラインセミナーを開催。それを録画してネット配信もしていた。

 受講料は会員以外が1万6500円、会員は3300~9000円。会員になるには入会金3万円と会費が月1万2000~3万円かかる。

 この会社は10年前から情報公開制度を使って通達書類を入手。会員の社労士らに提供してきたという。担当者は「社労士が顧客の企業にアドバイスする上で役に立つ情報を伝える。ニーズが高い情報は法令、制度が変わる際の変更点や行政側の意図」と説明した。

◆労基署の立ち入り調査情報も

 この会社の通達ビジネスの目玉は他にもある。労基署の立ち入り調査に関する情報の提供だ。企業を抜き打ちで訪れ、労務管理に問題がないかを調べる臨時検査(臨検)の時期は企業にとって関心の的だからだ。

 労基署ごとの実施予定リストは「極秘」だが、厚労省の「監督指導業務の運営に当たって留意すべき事項」という通達を入手すると、立ち入り対象になる企業の業種や時期などの予想がつくという。通達には、その年の重点方針が記されており、「過重労働事案が相次ぐ○○業界」といった記載があれば、その業種は要注意ということになる。

 同じように情報開示請求をした上で「厚生労働行政の内部資料」などとうたい、ネット上で通達文書を販売する業者は複数ある。

厚労省が労基署に通達した文書

厚労省が労基署に通達した文書

◆社労士からも「釈然としない」

 一方で、有料で情報を受け取る社労士からも「行政の内部文書でもうける商売には、釈然としないものを感じる」といった声を聞いた。通達ビジネスに問題はないのか。

 NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「省庁が情報公開した文書は、中には著作権があるものもあるが、そうでなければ販売や営利活動に使っても問題はない」と話す。情報公開を請求する権利は誰にもある。

 行政文書の情報公開請求は、大きく「市民運動型」と「通達ビジネス型」に分かれるという。情報公開法が施行された2000年代初頭から請求してきた愛知県の社会保険労務士、榊原悟志さんは「役所が独占してきた行政情報を開示させ、政策を監視しようとしたのが、いわば市民運動型。10年ぐらい遅れ、開示情報をビジネスに生かす動きが始まった」と解説した。

 行政が情報を隠したり、不正に走ったりしないよう「知る権利」を保障する情報公開制度は不可欠な存在だ。通達ビジネスが一部に釈然としない感情を生むのは、こうした考え方とのズレがあるからだろう。

 過労死した遺族関係者らの依頼で厚労省の通達を入手した過労死弁護団の笠置裕亮弁護士は「通達が(企業活動などに)活用されていたとは驚きだが、何より厚労省が労災認定を厳しくする基準や運用を内々に決め、全国の労基署に伝えていた通達自体に問題がある」とあらためて指摘した。

 労災認定に関わる通達問題 厚生労働省労働基準局補償課が昨年3月、過労死など労災認定をする際の労働時間の算定について、厳しい基準を採用するよう通達していた問題。通達は「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集」で、一定条件下の仮眠を労働時間から除外したり、持ち帰り残業を労働時間として扱うことに厳しい基準を課した。これにより労働時間が過小に算定され、労災の「不認定」の増加につながる恐れが生じている。

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February 09, 2022 at 04:00AM
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