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元ネスレ日本社長の高岡浩三が、ホリエモンの宇宙ビジネスに参画した理由 - ITmedia

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 ネスレ日本で「キットカット」「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」「ネスカフェ アンバサダー」などのイノベーションを実現してきた高岡浩三氏。現在はケイアンドカンパニーを設立して、自身のマーケティング理論を若手経営者らに伝える活動をしている。

 その高岡氏が2021年6月、ホリエモンこと堀江貴文氏が創業した宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズ(IST、北海道大樹町)のアドバイザーに就任した。民間による宇宙ビジネスは米国を中心として世界的に活発化し、日本でも多くのベンチャー企業が立ち上がっている。しかし、高岡氏は日本の宇宙ベンチャーにはマーケティングが足りないと指摘する。

 ITmedia ビジネスオンラインでは、高岡氏に単独インタビューを実施。【前編】フィリップ・コトラーが認めた鬼才 元ネスレ日本社長の高岡浩三に聞く「サラリーマンが内部からイノベーションを起こす鉄則」ではマーケティングの本質について聞いた。中編では、宇宙ビジネスに参画した理由を聞く。

高岡浩三(たかおか・こうぞう)ケイアンドカンパニー代表。元ネスレ日本代表取締役社長兼CEO。1983年、神戸大学経済学部卒。同年、ネスレ日本入社。各種ブランドマネジャー等を経て、ネスレコンフェクショナリーのマーケティング本部長として「キットカット受験生応援キャンペーン」を成功させる。2005年、ネスレコンフェクショナリー社長に就任。10年、ネスレ日本副社長飲料事業本部長として「ネスカフェ」の新たなビジネスモデルを構築。同年11月、ネスレ日本社長兼CEOに就任。「ネスカフェ アンバサダー」などの新しいビジネスモデルを通じて高利益率を実現する。17年より早稲田大学ビジネススクール国際諮問委員。20年3月、ネスレ日本退社。21年6月、インターステラテクノロジズのマーケティングアドバイザーに就任。著書に『ゲームのルールを変えろ』(ダイヤモンド社)、『ネスレの稼ぐ仕組み』(KADOKAWA)、『マーケティングのすゝめ』(フィリップ・コトラーとの共著・中公新書ラクレ)、『世界基準の働き方』(PHP研究所)など(撮影:河嶌太郎)

世界的マーケターがISTのアドバイザーに

 東京国際フォーラムで2021年11月に開催された、マーケティング国際カンファレンス「ad:tech tokyo2021」。セッション「マーケティング分野における宇宙の可能性」には、高岡氏と堀江氏が登壇した。

 さまざまな事業を手掛ける堀江氏は、北海道大樹町でロケットを開発する宇宙ベンチャー企業ISTの創業者でもある。ISTは19年5月に「宇宙品質にシフト MOMO3号機」で国内の民間単独ロケットとして初めて宇宙空間に到達。21年7月には「ねじのロケット(MOMO7号機)」と、「TENGAロケット(MOMO6号機)」で2回続けて宇宙空間への到達に成功した。

 観測ロケットMOMOでは、機体などに広告を掲載するビジネスも展開している。他にも、超小型の人工衛星を打ち上げるロケット「ZERO」の開発を進めるとともに、新会社「Our Stars」を設立して、超小型人工衛星を使った通信衛星サービスや地球観測サービスを計画。この日のセッションでも、2人は超小型人工衛星を活用したビジネスについて語り合った。

ad:tech tokyo2021のセッション「マーケティング分野における宇宙の可能性」

日本にとって優位性がある事業

 ネスレ日本で革新的なプロダクトやサービスを次々と世に出し、世界的なマーケターとして知られる高岡氏は、21年6月にISTのマーケティングアドバイザーに就任した。これまでとは全く畑が違う宇宙ビジネスに参画した理由を次のように明かす。

 「ホリエモンからアドバイザーになってくれないかと以前から頼まれていましたが、自分で会社を立ち上げてクライアントも殺到していたので、時間的余裕も自信もありませんでした。最終的には、プロデューサーをしているアンカー・デジタル・イノベーション・サロンの講演をホリエモンにお願いしたときに、交換条件を出されて承諾したのが本当のストーリーです(笑)。

 アドバイザーに就任する前は、彼がなぜ多額の私財を投じながらロケットを飛ばしているのかが分かりませんでした。あるとき、彼のホンダジェットに乗って大樹町のISTまで連れて行かれて、往復4時間の間にいろいろな話を聞きました。目指しているのは、日本製の人工衛星を日本製のロケットで格安で宇宙に飛ばして、革新的なサービスを提供することです。これは日本にとっては優位性がある事業だと感じました。

 日本の大企業も、20年後や30年後に向けてビジネスモデルをどのように変えればいいのか分からない状態です。多くの企業が宇宙ビジネスにもう少し本腰を入れることによって、宇宙にたくさん打ち上げた小型の人工衛星を、いろいろな業界のイノベーションに結びつけられると考えました」

日本の宇宙ベンチャーの課題は投資の呼び込み

 世界の宇宙ビジネスの市場規模は、21年時点で約40兆円と見られている。40年には110兆円規模に成長する見通しだ。ただ、米国企業に莫大な資金が集まっているのに比べ、日本の宇宙ベンチャーへの投資規模はまだまだだと高岡氏は指摘する。

 「宇宙ビジネスは大きなイノベーションです。しかし、投資の金が回ってこないと、イノベーションはできません。現状では米国や中国と比べて、日本の宇宙ベンチャーへの投資は2桁以上少ないのです。このままでは将来の日本は沈没するだけではないでしょうか。いくら政治家が分配するといっても、成長のない分配はますます貧しくなるだけです」

 そこで高岡氏が目指しているのは、日本企業に宇宙ビジネスに目を向けてもらうことだ。同時に、宇宙を舞台にした新しい技術開発に取り組むISTに対して、積極的に投資をしてもらう環境を作ることを狙う。

 「今までのISTは、ホリエモンのネットワークでしかお金を集めることができていませんでした。しかし、それでは足りず、ファンドも含めた投資家との関係を構築しなければいけません。

 その際に、人工衛星の技術を使ってどんなイノベーションを起こせるかを、企業に説明する必要があります。農業に活用できることを知ってもらえれば、トラクターなどの農機メーカーからの投資を呼び込めます。もちろん、自動車産業にも活用できます。

 さまざまな産業で使えることを知ってもらい、投資に名乗りを上げてもらうことによって、日本の宇宙産業も大きく成長できます。超小型の人工衛星を安価に打ち上げることによってイノベーションが生み出せることを説明し、企業から投資を呼び込むことが、ISTでの僕の役割です」

今までのISTは、ホリエモンのネットワークでしかお金を集めることができていなかった

新しい技術を積極的に活用して課題解決

 高岡氏がネスレ日本で実践してきたマーケティングについては前編で伝えた。新しい現実を見ながら顧客の問題を発見し、それに対するソリューションを作り、付加価値を生み出すのが、高岡氏が理論づけたマーケティングのプロセスだ。ソリューションを作る際に、高岡氏は新しい技術を積極的に取り入れてきた。

 そのひとつの例が、ネスカフェのコーヒーマシン「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」を進化させたもの。高岡氏はコーヒーを1杯から楽しめるマシンを開発。さらにそのマシンにIoTを搭載し、複数のマシンをインターネット経由で通信させることで、離れて暮らす高齢の親の見守りができるなどの付加価値を提供した。

 「気付いた新しい現実は、親が子どもと離れて1人暮らしをしているときに、心臓発作などで倒れても誰も助けに行けないことです。僕の母親も駅前のマンションに1人で住んでいましたが、前日までは元気だったのに、翌朝に妻がマンションに行ったら亡くなっていました。そういうことが現実に起きるのです。

 そこで、親子で同じマシンを買ってもらって、IoTによってつなぐことを考えました。親がコーヒーを飲むためにスイッチを押せば、通知が子どものLINEに届いて安否確認ができます。IoTを搭載したマシンは、子どもが2台買って親に1台渡すケースもあれば、親が2台買って子どもに1台渡すケースもあります。発売から1カ月で30万台が売れました」

 IoTを搭載したマシンは、他社の技術とコラボすることによって実現した。パートナーはソニーモバイルコミュニケーションズだった。すでに爆発的に売れていたマシンに、ソニーモバイルコミュニケーションズが開発したAI付きのエージェントを組み合わせた。その結果、エージェントに話しかけることによってコーヒーを淹(い)れたり、メッセージを送ったりできる未来型のコーヒーマシンが誕生したのだ。

宇宙ビジネスがものづくりを21世紀型に変える

 IoTを搭載したコーヒーマシン以外にも、ソフトバンクのロボットPepperを大量にリース契約して、家電量販店での接客に活用したことも話題になった。それまでは販売チームが各店舗で接客をしていたが、ロボットの活用によって販促費が削減され、コーヒーマシンも売れた。新しい技術に目をつけたことで、世界的には伸び悩んでいたネスカフェの売り上げを、ネスレ日本だけが伸ばすことができたのだ。

 高岡氏は、ISTが開発する小型打ち上げロケットや人工衛星などの新しい技術が、これまでにないビジネスモデルを生み出す可能性を感じている。

 「東日本大震災の時に、ネスレで衛星電話を持たされていました。当時通信が使えなかったけれど、衛星電話のおかげでスイス本社と話すことができた記憶があります。これからは衛星通信によって飛行機に乗っていても、海や砂漠の真ん中でもどこでも通信ができます。地球を観測するリモートセンシングを使えばリアルタイムで誰がどこに行っているか分かるため細かい人の行動データが取得できるので、マーケティング活動に生かすこともできます。衛星によって取得したビッグデータをAI、IoTを活用することであらゆる産業でイノベーションを起こすことができるんです。

 日本はものづくり大国と言われながら現在は衰退していて、これまで培ったものづくりをどう生かせばいいのか分からなくなっています。それが宇宙ビジネスを契機にすることで、20世紀の技術を生かしながら、ものづくりを21世紀型に変えていくことが可能になります。

 特にこれからは、人工衛星の新しい技術を取り込んで、新しいビジネスモデルを作ることが必要です。ISTをはじめとする宇宙ベンチャーと多様な産業のコラボが広がることで、イノベーションを起こしていけるのではないでしょうか。

 新しい現実と諦めている課題を見抜くことで、ビジネスは生み出せます。大企業も、中小企業も、スタートアップもまだまだそういうことに気付いていません。宇宙ビジネスでマーケティングを展開して、イノベーションを起こす企業を増やしていきたいですね」

 高岡氏がISTのマーケティングアドバイザーに就任したのは、人工衛星の技術に可能性を感じると同時に、新しい産業や若い経営者を支援していきたいという思いもある。後編では、若い世代を支援する思いについて聞く。

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January 28, 2022 at 03:00AM
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