スポＢｉｚ斜め斬り
東京五輪・パラリンピックが閉幕して早くも北京冬季大会が目前です。２０１３年に東京開催が決まってからあと１年で１０年と考えると、月日がたつのは早いものです。招致決定に先立つ２年前、１１年のスポーツ基本法でスポーツ立国の実現に向けた具体策、スポーツ基本計画の策定が示されました。第１期が１２年から１７年３月、第２期が１７年から２２年３月、実はこの４月から第３期スポーツ基本計画が施行されます。みなさん、ご存じでした？
第１期、第２期のスポーツ基本計画は国政・地方自治体のスポーツ事業の基盤となってきました。オリパラが終わった今、第３期スポーツ基本計画は新たな日本のスポーツの在り方を示していると言ってよいかもしれません。従来、スポーツの関わり方は「する」「みる」「支える」の３つに代表されてきましたが、第３期では新たな視点が加わることになりました。「つくる」スポーツと「はぐくむ」スポーツです。
特に東京オリパラに向けて特徴的だったのが「つくる」スポーツです。新しいスポーツというと１９８０年代に盛んだったニュースポーツを思わせますが、「つくる」スポーツは一味違い、競技をつくるだけにとどまらず、競技をつくる仕組みそのものを「つくる」点がポイントです。
社会学者のアルビン・トフラーは『第三の波』の中で、消費者自身がコンテンツを生み出す「生産消費者」の登場を予測しています。２０２２年のいまや、ＳＮＳや動画サイトなどで消費者自身が動画やイラストをつくって楽しむ生産消費の仕組みが現実のものとなりました。こうした生産消費の仕組みと同様に、スポーツ庁は１８年度の官民連携事業で「スポーツ共創ワークブック」を公表し、持続可能なスポーツの仕組み、みんなでつくってみんなで楽しむ「つくる」スポーツを示しました。
既に「つくる」スポーツを実践する事業者も出てきています。世界ゆるスポーツ協会では、スポーツ弱者を世界からなくすことを掲げ、誰もが参加できるスポーツを生み出しています。ベビーバスケ、こたつホッケー、１００センチ走など聞くだけでクスっとするような競技が並びます。超人スポーツ協会では、身体拡張や感覚拡張といった最新のテクノロジーを駆使し、スポーツと機械的なテクノロジーを組み合わせ、性別、年齢、障害の有無に関係なく、みんなが「超人」になって競い合えるスポーツを考案し続けています。運動会協会では運動会競技を参加者自身が考える「未来の運動会」を実施、展開するとともにスポーツ共創人材の育成にも力を入れています。
「つくる」スポーツはまだまだ市場規模も小さく途上ではあるものの、スポーツそのものをリデザインすることが社会に受け入れられ始めている点が重要です。近年話題にのぼるダイバーシティやインクルーシブな社会の実現に向けた動きとも言えるでしょう。スポーツに関わる接点がなかった技術者やクリエイターの参画は、新興企業を巻き込んだスポーツによる社会課題解決に向けた〝パーパス・ドリブン〟な共創的ビジネスの創出にもつながる可能性を秘めています。
もはやスポーツビジネスは、一部の関係者によるとっつきにくい閉じられた市場ではなくなりつつあります。みなさん自身が「つくる」スポーツビジネス、興味ありませんか？
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上林功（うえばやし・いさお）１９７８年１１月生まれ、神戸市出身。追手門学院大社会学部准教授、株式会社スポーツファシリティ研究所代表。設計事務所所属時に「兵庫県立尼崎スポーツの森水泳場」「広島市民球場（Ｍａｚｄａ Ｚｏｏｍ－Ｚｏｏｍ スタジアム広島）」などを担当。現在は神戸市や宇治市のスポーツ振興政策のほか複数の地域プロクラブチームのアドバイザーを務める。
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新たな潮流が次々と生まれているスポーツビジネス界の話題を取り上げ、独自の視点で掘り下げます。
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January 21, 2022 at 01:00PM
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