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新型コロナウイルス感染症は、風邪のように毎年やってくる「季節性の病気」になるかもしれない|WIRED.jp - WIRED.jp

新型コロナウイルスは、まるで風邪のように毎年やってくる。そして断続的な外出規制が2022年まで続く可能性がある──。こうした研究結果をハーヴァード大学の研究チームが発表した。ソーシャル・ディスタンシングの緩和と病床不足の抑制、そしてウイルスの感染拡大を同時に実現する鍵となるのは、抗体検査の実施や“監視モード”への移行、そして集団免疫の獲得だ。

WIRED(US)

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EUGENE MYMRIN/GETTY IMAGES

新型コロナウイルス(正式名称は「SARS-CoV-2」)は、遺伝子的に言えばいとこに近いSARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルス(正式名称は「SARS-CoV-1」)と、よく比較される。それにはもっともな理由がある。2000年代初頭にSARSの流行を引き起こしたウイルスは多くの点で、わたしたちがいま闘っている相手と酷似しているからだ。

新型コロナウイルスが物体の表面上で生存する期間やマスク着用の効果を研究するとき、研究者はSARSウイルスを参考にしている。それと同時に、わたしたち全員が外出を控えた場合に、感染者数と死者数の曲線がどれだけ下降するかを示す指針にもなる。

こうした比較は、ある種の希望を与えてくれる。ソーシャル・ディスタンシング(社会距離政策)と移動制限は、およそ1年でSARSの流行を封じ込めることに成功したからだ。

風邪のように毎年やってくるとしたら……

ところが、こうした全面的な封じ込めが成功する見込みは、いまでははるかに小さくなっている。新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の長期的な見通しを立てる際には。さまざまな類似のウイルスについて考えたほうが妥当かもしれない。例えば、HCoV-OC43やHCoV-HKU1など、なじみの薄い同系統のウイルスのほうが新型コロナウイルスに近いとしたら、どうだろうか。

それらの名前になじみはないだろうが、誰もがこれらのウイルスに遭遇している可能性がある。これらは風邪の原因となるウイルスなのだ。SARSやMERS(中東呼吸器症候群)より致死率は低いものの、より厄介な存在といえる。季節の変化とともに流行と終息を繰り返し、時の経過につれて人間の免疫力が低下する。だからわたしたちは、何度も繰り返し風邪をひくのだ。

ハーヴァード大学の公衆衛生学の研究チームが4月14日に『サイエンス』で発表した論文は、こうした可能性を探っている。同時に、その類似性がCOVID-19の感染拡大に果たす長期的な意味を論じている。

その結論は、やや厳しいものだ。SARS-CoV-2がこれらの風邪ウイルスのような足跡をたどるとすれば、集団免疫が形成され、持続するまでに時間がかかる。集団免疫とは、集団の十分な数がすでにウイルスに感染したか、ウイルスに対抗するワクチンを接種したときに、感染の連鎖が断ち切られる現象を指す。

集団免疫が獲得されるまで、突発的な感染拡大は日常茶飯事となる。そこにウイルスの重症度の高さが加わることから、毎回の感染拡大で医療崩壊が起きることを防ぐには、ソーシャル・ディスタンシングの措置を繰り返し実施する必要がある。

外出規制は2022年まで続く?

ハーヴァード大学の研究チームは、少なくとも断続的な外出規制がしばらくの間、おそらく2022年まで続く可能性があることを突き止めた。

季節の影響は「確かにゼロではない」と、論文の共著者であるハーヴァード大学の疫学教授であるマーク・リプシッチは、14日の記者会見で説明している。ここでいう季節変動とは、ウイルスが夏に消えてなくなることとは違うのだと、リプシッチは警告する。

さらに、突発的な感染拡大はいつでも起こりうるとしたうえで、秋に始まる感染拡大のほうが一層深刻になる可能性があると語った。この種の変動は、ソーシャル・ディスタンシングの措置を実施するタイミングを考える上で、重要な意味をもつ可能性がある。

COVID-19がコロナウイルスに起因する風邪の伝染と同じパターンを示すかどうかについて、確実なことは何もわからないと、研究チームは認めている。新型コロナウイルスは出現してからまだ数カ月しか経っていないことから、ほかの季節に感染がどのように広がるかを本腰を入れて研究できた者はいないからだ。

免疫がどれだけうまく形成されるか、形成されたあとどれだけの期間にわたって持続するのかも、まだわかっていない。また、ハーヴァード大学の研究チームのモデルは、ウイルスが医療システムにかける負荷を軽減する治療薬やワクチンを科学コミュニティが開発できないという、やや暗い見通しをある程度前提としている。それらの前提は、いずれも変わる可能性があると研究者は言う。

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新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」に関する確かなデータが欠如していることから、風邪の原因となるコロナウイルスは長期的な比較を行ううえで役立つと、今回の研究には参加していないトロント大学の疫学者アッシュリー・チュートは指摘する。

「風邪の原因となるコロナウイルスは、SARS-CoV-2と同じようにふるまうのでしょうか。おそらくそうではないでしょう。違うウイルスなのですから」と、チュートは言う。「しかし、特に長期的な見通しを考えれば、それがおそらく現在の研究の出発点にする必要がある最良の類推と言えるでしょう」

ハーヴァード大学の論文は不確実性の概要をうまく説明しているとも、チュートは語る。論文はモデルの役割を果たしている。つまり、わたしたちが未知の出来事に備える助けになるのだ。

鍵となるのは抗体検査

今回の研究でハーヴァード大学の研究チームは、あらゆるソーシャル・ディスタンシングの中核をなす目標を研究の出発点としている。その目標とは、病院の病床不足を招くことなく、ウイルスの感染拡大を抑えることだ。

研究チームはコンピューターモデルを使用して、HCoV-OC43とHCoV-HKU1のふるまいを参考に、これまでに判明している新型コロナウイルスの感染率と重症化率を計算に入れて、潜在的な季節変動を推測した。その結果、新型コロナウイルスを制圧するには、タイミングよく実施したとして、ソーシャル・ディスタンシングを2022年まで続ける必要があることが判明した。

時間が経過してウイルスに対する集団免疫率が徐々に高まるにつれて、実施期間と厳しさの両面でソーシャル・ディスタンシングを緩和できるという。そうなれば、措置と措置の間に訪れる比較的正常な状態は、より長く持続する。

ウイルスの再発の可能性をモデル化するときの大きな問題は、人口のどれだけの部分がどれだけ早く免疫を獲得するかだ。それには抗体検査が手始めとしてふさわしいと、ハーヴァード大学のリプシッチは考えている。

ウイルスへの抗体を調べる血液検査を広範囲に実施すれば、まず何人の人が免疫をもっているか、その免疫が最終的にどれだけの期間持続するかを調べることによって、保健当局が免疫の問題について本腰を入れて研究できるようになる。より長く持続する免疫や、潜在的にはほかのコロナウイルスとの交差免疫でも、感染症をより早く根絶できることを意味している。

重要になる“監視モード”への移行

それと同様に、ほかの外部要因もソーシャル・ディスタンシングの必要性の軽減に役立つ可能性がある。その外部要因には、ワクチンや集中治療室(ICU)行きを余儀なくされる感染者の数を減らす効果的な治療が含まれる。

ソーシャル・ディスタンシングをどれだけ厳しくする必要があるかを左右する重大な要因のひとつは、国の医療機関の受け入れ容量だ。病床と医療スタッフを増やすと、一度に多くの感染者が発生しても個々の病院の状況が逼迫することがない。このため、より早い集団免疫の獲得に役立つ可能性があると、研究チームは指摘している。

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接触者の追跡、つまり感染者と濃厚接触したすべての人を記録することも、重要な役割を果たす。疫学者や保健当局者がいま米国で考えていることは、現在の感染者の急増が抑制されたら監視モードへと移行し、経済活動を再開させる。それと同時に広範囲の抗体検査を実施し、スマートフォンを利用するか大人数の保健当局の職員を動員して、接触者を追跡することだ。

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だが、シンガポールをはじめとする東南アジア諸国の状況は、外出規制を伴わない監視措置だけでどれだけの期間もちこたえられるかという見通しに、暗い影を落としている。これらの国では当初は接触者の追跡と隔離がうまく機能していたが、のちに海外からの旅行者が新型コロナウイルスを持ち込んだことで、感染者の再度の急増に直面したからだ。

「世界最高峰とも言える公衆衛生システムをもつシンガポールでさえ思い知らされたように、監視措置の問題点は、この感染症に対してこれらの措置を有効に機能させることが非常に難しいことです」と、リプシッチはいう。広範囲な検査と監視は、拡大の勢いが比較的穏やかな時期に発生する感染例を管理し、新たな感染者の急増に対する警戒を保健当局に促すうえで、重要な役割を果たすだろう。

これは1回限りで終わる措置ではない

ところが、米国をはじめとするその他の国の公衆衛生システムは、それらの対策を実施するには整備が不十分であり、いまだに感染の急増を必死に抑え込もうとしている最中だ。現在の米国では「何らかのソーシャル・ディスタンシングを続ける必要があると思います」と、リプシッチは言う。

季節を考慮に入れることは、ソーシャル・ディスタンシングのタイムリーな実施を確実にする上で重要な役割を果たす可能性がある。例えば危険性のひとつは、長期間にわたってソーシャル・ディスタンシングを厳格に実施したあと、秋に新たな感染者の急増が始まる直前に措置を緩和することだろう。ソーシャル・ディスタンシングの初期には免疫を獲得する人がほとんどいないことから、措置の緩和は次の感染急増期に現在より悲惨な結果をもたらす可能性もある。

こうした急激な緩和は、人や物の流れの観点からも実施することは難しいだろう。「この種の措置は、オン、オフできるスイッチとは違います」と、トロント大学のチュートは言う。

まず、米国は現在の感染者の急増を抑え込む必要がある。次に、感染者の再度の急増の兆候を監視するために、十分な数の検査を実施する必要がある。

だが、続けて起きる感染者の急増に備えるために、ソーシャル・ディスタンシングを再び実施する時期を厳密に決定する難しさは残る。特に再開したと思ったらまたすぐ休止になる学校の予定、政治運動、企業の人員配置に水を差すような、行きつ戻りつを繰り返す平常状態への復帰を受け入れことは、社会にとって難しいかもしれない。

「これらのモデルが示しているのは、これが1回限りで終わる措置ではないということです」と、チュートは言う。「次のステップは何らかの持続可能な状態に到達する方法を見つけることなのです」

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