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“コロナ優等生”ドイツの現実:日経ビジネス電子版 - 日経ビジネス電子版

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新型コロナウイルス感染拡大への対応について、欧州諸国の中でドイツが高い評価を得ている。中央の政治家が気づくより早く官民の医療機関が検査体制を整えた。地方当局は公共施設を迅速に閉鎖した。次なる課題は行動制限の緩和と経済の復興だ。メルケル政権がこれに適しているとは言い切れない。

ミュンヘンの商業地区も人影がまばらだ(写真=AP/アフロ)

 欧州の大国のうち、新型コロナウイルス感染拡大への対策に現時点で成功していると言える国があるとすれば、それはドイツだ。他国に比べて死者数は少なく、経営難に陥った企業や収入減にあえぐ労働者に政府が経済支援を提供している。政治家たちは冷静で有能だという印象を与える。

 一方、奇矯な政策(編集部注:英国が採用した「集団免疫」などを指すとみられる)を打ち出す国の姿は対照的だ。英国では、なぜドイツのように多くの検査を実施しないのか、とジャーナリストが政治家を問い詰める。

 米国のテレビ各社はドイツのイェンス・シュパーン保健相に対し秘策を公開するよう要請している。あるコラムニストは、米大統領選において民主党の事実上の候補になったジョー・バイデン氏が、副大統領候補にアンゲラ・メルケル独首相を選ぶかもしれないと揶揄した。

 だがドイツの実情はより複雑だ。「われわれは完璧で、すべてを計画していた、とはとても言えない」。独ハンブルク大学でウイルス学を研究するヨナス・シュミットシャナジット氏はこう語る。

 複雑だった実情の第1は検査だ。検査は決定的に重要である。実施に向けて、官民合わせて200近い研究所からなる既存のネットワークに依存した。ベルリンのある病院が1月に検査体制を確立すると、他の病院も後に続いた。迫りくる危機を、政治家らが認識する前のことだ。

 エヴァンジェロス・コトソプロス氏は、「他国は研究所の設置から始める必要があったが、ドイツにはすでに研究所がそろっていた」と指摘する。同氏は、民間研究所「ソニック・ヘルスケア」のドイツ部門でトップを務める。ドイツは現在、週に35万件の検査を実施しており、これを大幅に上回る数の検査もこなせるとみられる。

地方の当局が迅速に施設封鎖

 第2は、国政を担う政治家と衛生担当者が二の足を踏む中、地方当局が即座に動いた点だ。バイエルン地方とラインラント地方で初期の大量感染が見つかると、公共の場所を直ちに閉鎖し、感染者の接触状況の追跡を開始した。

 「ドイツは幸運でもあった」と言うのは国会議員で、疫学者でもあるカール・ラウターバッハ氏だ。理由は大きく2つある。一つは、イタリアの状況を受けて早くから警戒を始められたこと。もう一つは、初期の感染者の多くが若者だったため、入院者数と死者数を抑えられたことだ(ただし、どちらの数値も現在は増加している)。ドイツはここで稼いだ時間を使い、感染曲線を横ばいに保った。

 ドイツが次の段階へ進むに当たって、危機の初期段階において感染者の隔離に成功した経験をベースにすることが重要だ。メルケル首相はあらゆる感染経路を追跡したいと考えている。そのためには、さらに検査を実施するとともに(供給上の制約が克服できれば週に450万件まで可能と報道されている)、新たな感染者に接触した人を徹底的に追跡しなければならない。

 プライバシーに関する懸念はあるものの、アプリの活用が有効かもしれない。感染経路を追跡する作業の大半は公衆衛生局に勤める数千人の職員が担うことになる。ドイツ公衆衛生局は400余りの出先機関を持つ。同局には過重労働と資金不足が重くのしかかっている。

日経ビジネス2020年5月4日・11日号 68~69ページより

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April 29, 2020 at 10:08PM
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