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JR東海が喚起する旅行需要 寒さ続く冬の京都で打ち出した「ととのい」戦略 - ITmedia ビジネスオンライン

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 サウナや銭湯に入ることで、心身共にリフレッシュする楽しみがちょっとしたブームになっている。こうしたリフレッシュ方法は俗に「ととのう」と呼ばれており、2021年の「ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされた。まさに、今話題となっている言葉だ。

「ととのう」人気にあやかろうと、JR東海が打ち出したのは?
京都市北区の銭湯「船岡温泉」が舞台

 この「ととのう」人気にあやかろうと、JR東海は「ととのう」をコンセプトにした京都の観光キャンペーンを打ち出している。「禅と湯 ととのう京都」と題したもので、JR東海が1993年から実施しているキャンペーン「そうだ 京都、行こう。」の1パッケージとした。

 サウナを設置している京都市内の銭湯を巡り、そこで「ととのう」ことができるようになっている。加えて、新たな「ととのう」方法として仏教の「禅」を打ち出していて、京都府内の臨済宗、曹洞宗、黄檗(おうばく)宗のお寺での坐禅体験を提供する内容となっている。

 同社は「禅と湯 ととのう京都」を体験するための「ととのうセット」を旅行商品として販売。現地購入(3月13日まで)と事前購入(3月10日まで)の2方法を提供する。現地購入では「ととのうセット」をJR東海ツアーズ京都支店、JR東海ツアーズ京都駅新幹線中央口支店で直接販売している。価格はどちらも2000円に設定し、利用期間は3月13日までとした。

ととのうセット

 事前購入では、JR東海がコロナ禍で打ち出している新しい観光様式「#ずらし旅」のWebサイトや、パソコンやスマートフォンで新幹線の切符などを予約購入できるポータルサイト「EXサービス」で販売している。

 事前に購入した場合でも、購入した本商品を「ととのうセット」と引き換えるためには現地購入と同様に、JR東海ツアーズ京都支店やJR東海ツアーズ京都駅新幹線中央口支店に直接足を運ぶ必要がある。

 「ととのうセット」には、坐禅体験を提供する5寺院の「参拝整理券」と、京都府浴場組合加盟店の銭湯で使える入浴券1枚を入れた。さらに坐禅が体験できる寺院や、サウナを楽しめる銭湯だけでなく、飲食店や観光スポットなどを掲載した地図「ととのうMAP」や、入浴施設で使える「『ととのう京都』オリジナル銭湯タオル」を付けている。

「ととのう京都」オリジナル銭湯タオル

 「ととのうセット」に付属する参拝整理券を使える施設は、右京区嵯峨にある天龍寺(臨済宗)や、東山区本町にある東福寺(臨済宗)、左京区南禅寺福地町にある南禅寺(臨済宗)、宇治市にある興聖寺(曹洞宗)、同じく宇治市の萬福寺(黄檗宗)の5寺院だ。いずれの寺院でも、坐禅体験をする場合は参拝整理券のほかに、各寺院で別に定める坐禅体験料を現地で直接納めるようにした。

 入浴券は各都道府県が出している銭湯回数券と同じものとなっていて、京都府内の銭湯施設であればどこでも使えるようにしている。

 今ではサウナを併設する銭湯も珍しくないが、例えば東京都内の場合、各都道府県で定める銭湯の料金(公衆浴場入浴料金)だけだと入浴のみの利用に制限され、サウナの利用には別料金を取る施設も珍しくない。一方、京都府内の銭湯では入浴料金だけでサウナも使える施設が少なくないようだ。

ととのうセットの内容

京都市北区の銭湯「船岡温泉」が舞台

 実は銭湯の起源の一つには、仏教の布教も兼ねてお寺などで浴室を民衆に開放していた「施浴」がルーツになっている点もある。仏教寺院が多い京都では、この「施浴」に端を発する銭湯施設が少なくなく、他の都道府県に比べて銭湯の数が多いのも特徴だ。現在でも京都府内には約100軒の銭湯が現存するといわれている。

 戦前からある古い温浴施設も少なくない。例えば京都市北区にある銭湯「船岡温泉」は、1923年(大正12年)に料理旅館「船岡楼」の入浴施設として創業しており、戦後の47年(昭和22年)に銭湯として開業した。創業当時からある建物を今でも使っており、施設内には日本で初めて導入されたとされる電気風呂や、ジェットバスや薬風呂、サウナなどが設置されている。

船岡温泉の内部

 内装も戦前の趣きが強く残っている。木造の脱衣場の天井は、源義経と鞍馬天狗の彫刻があしらわれた漆塗りのモニュメントがあるほか、浴室のタイルの一部には「マジョリカタイル」というスズとエナメルでできた陶器が使われていた。大正時代の西洋式建築に広く使われており、往時を象徴するタイルとなっている。

 タイルの釉薬(うわぐすり)に鉛が使われており、それによって独特の透明感を実現しているものの、現在では環境面から製造できない遺構でもある。

 また、脱衣所の男湯と女湯を仕切る欄間には、32年(昭和7年)の第一次上海事変で敵陣を突破して自爆し、突撃路を開いた英雄「爆弾三勇士」の活躍ぶりがあしらわれており、建物の至るところで戦前の往時をしのぶことができる。これらの建造物は文化的価値が高く認められており、船岡温泉は2003年には国の登録有形文化財に登録された。

 「ととのうセット」では、この船岡温泉をはじめ、京都府内を代表する銭湯施設を案内するマップが同封されている。なお、船岡温泉をはじめ京都府内や関西には「温泉」とつく銭湯があるが、これは上方における伝統的な風呂屋の屋号に多く見られるものであり、必ずしも天然温泉を意味するものではない。

 船岡温泉も実際の天然温泉ではないものの、浴室のお湯には水道水ではなく京都の天然地下水が使われており、実際に入ると柔らかい感触に包まれるのが特徴だ。この感覚は一般の家庭で入るお湯とは明らかに別のものなので、それだけでも楽しむ価値を提供している。船岡温泉に限らず、地下水を使用した銭湯がいくつもあるのが京都の銭湯の魅力だ。

商品化の意図は? 担当者に聞いた

 なぜこのタイミングで「禅と湯 ととのう京都」という観光戦略を打ち出したのか。旅行商品を企画したJR東海営業本部・観光開発グループの八尾翔平係長はこう説明する。

 「『ととのう』が2021年の流行語にもなったことや、空前のサウナブームを迎えていることから、これに便乗する形で京都でも何かできないかと思ったのがきっかけです。調べてみると、京都にはサウナを併設した伝統ある銭湯が数多くあることや、サウナだけでなく、坐禅でも『ととのう』ことができないかと思い、『ととのうセット』を提供させていただきました。寒さが厳しい日々が続きますが、銭湯と坐禅で冬の京都を楽しんでいただきたいと思います」

船岡温泉の内部

 一般的に銭湯のサウナは浴室のおまけという位置付けのところも多く、サウナの温度や特に水風呂の温度がサウナに最適化されていない場合も珍しくない。ただ、京都市下京区にある「サウナの梅湯」など、サウナを前面に打ち出している店舗もある。

 サウナブームと禅体験を武器に売り上げをどこまで伸ばせるか。

水風呂

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March 02, 2022 at 11:37AM
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