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プーチンが蘇らせた冷戦 ビジネスの自由を謳歌できる時代は終焉? - 日経ビジネスオンライン

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 「経済の力はどんな時も政治力を具現化する手段であった。(中略)最も原始的な種類の戦争だけが経済の要素から独立していた」

 20世紀を代表する英国の政治・歴史学者で、戦争の原因を鋭く考察したE・H・カーは、代表作『危機の二十年』にこう記した。経済と政治を分けて考えるのは誤りだ、という文脈においてである。その言葉がいかに真理を突いているかを、今、我々は実感している。

 経済と政治が不可分であるという真理は、実は日本国憲法にも隠れている。憲法9条に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とある。この部分は「land, sea, and air forces, as well as other war potential, will never be maintained」と訳される。カーは「war potentialは経済力の別名」と論じている。つまり「その他の戦力」とは「経済力」を指す。

 冷戦の終結から30年余り、大国と大国が軍事衝突する心配がほとんどない時代が続いた。この間、経済は政治とは独立しているかに見え、企業はビジネスの自由を謳歌してきた。ロシアのウクライナ侵攻は、そんな「平和な時代」に打ち込まれたくさびである。経済と政治は、本来の関係を再びあらわにし始めた。

統合と分裂が引き起こしたウクライナ危機

 歴史を振り返ると、今回のウクライナ危機は①経済のグローバル化という「統合」②旧ソビエト連邦の崩壊を起点とする「分裂」──が相まって引き起こした出来事だと言える。

今年2月、マクロン仏大統領(右)との首脳会談に臨んだロシアのプーチン大統領(写真:AFP/アフロ)

今年2月、マクロン仏大統領(右)との首脳会談に臨んだロシアのプーチン大統領(写真:AFP/アフロ)

 ①は米国のパワーの相対的な低下を招き、②はロシアのウラジーミル・プーチン大統領の心の中に恐怖を育てた。後に触れる米大統領らの不用意な発言が、プーチン大統領に「今こそ恐怖を跳ね返すチャンス」と思わせたのではないか。

 1980年代からの経済グローバル化で最も象徴的なのは巨大な統一市場の誕生だ。92年には欧州連合(EU)が、94年には米国・カナダ・メキシコ(北米自由貿易協定=NAFTA)が市場を統合した。95年には世界貿易機関(WTO)が設立され、各国の経済も相互により強くつながった。2001年の中国によるWTO加盟は、その象徴的なイベントだ。

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 ヒト、モノ、カネだけでなく、情報も世界をつなぐ存在となった。インターネットの普及による通信コストの劇的な低下は製造業の国境を越えた分業を促した。開発や設計、製造といった各工程を自社内で完結させる垂直統合型のプロセスは、各部品や工程を異なる企業が担当する水平分業型に姿を変えた。

 先進国の企業は国外でのビジネスを拡大させた。それまでと異なったのは、輸出に加えて対外直接投資もエンジンとしたことだ。1972年のニクソン・ショックに端を発する変動相場制への移行が資本移動の自由化を導いた。企業はモノだけでなく、カネも自由に移動できるようになった。そしてカネの移動の自由は、製造拠点をはじめとするビジネスそのものの外国への移転を加速させた。

 ソ連の崩壊と分裂はこの一連の過程の中で起こった。ウクライナをはじめとする共和国が相次いで独立。この余波によりユーゴスラビア(当時)でも構成共和国の独立が進んだ。巨大な自由経済圏が磁力となりこれらの動きを促したとも言えるが、変化の過程できしみを抱えた。

 ロシア内に残されていたチェチェンは、旧ソ連時代から独立の動きを強めていた。ロシアはチェチェンの反政府勢力を助けてこの動きを押しとどめていたが、1994年12月に軍を侵攻させた。

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March 29, 2022 at 03:00AM
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