黒人は旅行をする。子どもの頃から、私(著者のGlynn Pogue氏)にとってそれは当たり前のことだった。両親がニューヨーク州で経営していた小さなホテルの食堂には、米国だけでなく世界中から来た黒人の旅行者が、入れ代わり立ち代わり訪れた。伝統的な南部風の朝食を取りながら、宿泊客はその日どの美術展に行こうかと計画を立てたり、前日にブロードウェーで観たショーの感想を語り合ったりしていた。
けれど、ホテルで過ごした時間はどんな名所にも勝る旅の思い出だったと、誰もが口をそろえて言っていたのを覚えている。黒人が経営する宿で、自分と似たような人々とともに滞在することで、身の安全を感じ、認められ、温かいもてなしを受けることができたと。
ニューヨーク州ハーレム出身の郵便配達員ビクター・ヒューゴ・グリーンは、1936年、黒人が平等で自由な旅行ができるようにと願って「The Negro Motorist Green Book(黒人の自動車旅行者のためのグリーンブック)」を出版した。
黒人の旅行者のバイブルとも言うべきこのグリーンブックは、黒人が安全に利用できる宿泊施設、レストラン、美容院、ナイトクラブ、ガソリンスタンドなどをリストにして紹介するガイドブックで、1967年まで毎年のように発行されていた。その内容は時代とともに進化し、旅行を楽しむ余裕が出てきた新しい世代の黒人たちが、差別を受けることなく安心して旅行するために欠かせない情報源となった。
グリーンは、黒人の旅行には数々の障害が伴うことを知っていた。白人以外お断りの施設でサービスを拒否されるという屈辱だけではない。かつて「日没の町」と呼ばれた町では、白人以外は日没までに町を出なければならないという条例があり、もし黒人の旅行者がそうと知らずに迷い込めば、留置所に入れられたり、襲われたり、最悪の場合には殺されることさえあった。
米国のテレビドラマ「ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路」第1話で、黒人の主人公が夕日と競うようにして町を逃れる、緊迫した場面がある。これは、日が沈むまでにそこを離れなければ、命に関わるためだ。(参考記事:「白人女性の嘘が14歳少年のリンチ死を招いた」)
今では、ツアー会社やブログなど様々な情報源があり、グリーンブックが提供していたよりも多くの情報を得られるようになった。そうした情報源は、黒人向けの旅行事業者を応援するだけでなく、コミュニティの形成にも貢献している。新型コロナウイルス感染症が拡大する前のある調査によると、アフリカ系米国人は年間630億ドル(約6兆5700億円)を旅行に費やしていた。
2020年は、米国の黒人にとって激動の一年となった。警官による黒人殺害事件、「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)」運動の高まり、大統領選挙など、社会は大きく変化した。グリーンが夢見た理想が、今ほど遠くに感じられたことはないだろう。そこで、グリーンブックから受け継がれたもの、そして今黒人の旅行者に何が必要かについて、黒人の旅行に詳しい業界の人々に話を聞いた。(参考記事:「人種差別抗議デモ、人種を超えて広がる人々の思いと闘い」)
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