本記事は、『50歳の壁 誰にも言えない本音』(著・河合薫、MdN新書)を一部抜粋し、ITmedia ビジネスオンライン編集部で編集の上、転載したものです。
人生には、自分からしかけて起こす「変化」と、放っておいても起こる「変化」の2種類があります。
前者には前向きに対処できても、後者の変化に対応するのはなかなか骨が折れる。なにせ「マジか!」と狂喜乱舞するような変化はごくごく稀。大抵は心が千々に乱れ、動揺し、自分を見失いそうになる出来事のオンパレードです。
たとえ他人が一笑にふすような出来事でも、自分にとっては、ヘビー級のボクサーにパンチをくらったように目の前が真っ暗闇になってしまうのです。
妻の下剋上! 夫婦の勢力関係をめぐるバトル勃発
大手電機メーカーに勤める山越さん(仮名)51歳は、妻と立場が逆転するという“まさかの変化”に遭遇。真っ暗闇どころか、谷底に突き落とされた気分になったそうです。
3カ月ほど前、家に帰ったらワインとケーキがおいてあった。子どもたちはもう独立していますし、孫がいるわけでもありません。いったい何のお祝いなのか? と不審に思っていたら、妻から昇進を告げられました。
うちの妻は総合職です。彼女の会社は積極的に女性活用を進めているので、若い社員のロールモデルを期待されたみたいでした。ずっと共働きで育児をやりながら本当によくやってくれたので、そのときは「よかったね。おめでとう」と心から祝福できました。
ところが、先日、リビングの机に彼女の給与明細がおいてあって。そこそこもらってるんだろうなぁとは思っていましたが、自分よりはるかに稼いでいたので愕然(がくぜん)としました。その日は役職定年になった先輩から、「給料は下がるわ、元部下が上司になるわで、プライドがもたん」と聞いていたので複雑な心境になりました。だって、自分も数年後には先輩と同じ下り坂をたどるわけです。なのに妻は上り坂なわけですからね。
それからというもの、妻のブランドもののバッグとか服装とかが、やたらと気になる。仕事のことを話されると、聞こえないふりをして。自分でもせこいと思いますよ。俺、何やってんだろうって。
それまでは「Happy wife, happy life」なんて、かっこつけてよく言ってたんですけどね。もう言えません。私はちっちゃい奴なんでしょうか。
ちっちゃい奴……ではないと思います。ただ単に、「社長=夫」の椅子を「副社長=妻」に奪われ、自尊心がボロボロになった。妻が下克上したことで、山越家は戦国時代に突入してしまったのです。
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夫6:妻4が夫婦円満の黄金比
共働き世帯が7割近くを占める世の中になっても、妻の賃金は夫より低くて当たり前。
正社員の男性の平均年収は550万円なのに対し、女性は384万円と、200万円もの違いがあります。なぜ、こんなにも違いがあるのか? 男性より女性の方が能力で劣っているわけじゃないのに、いったいなぜ?
答えはシンプル。「性別役割」の根深さです。長年、共通理解として刷り込まれた社会の価値観は、無自覚の価値観として個人の心の奥底に残り続けます。いまだにお茶汲み、ゴミ捨ては女性社員の仕事と勘違いしている輩はいますし、転職に成功した女性に、「いいよな? 女は。失敗したら結婚すればいいんだもんなぁ」などと、セクハラまがいのレッドカードトークをする化石のような男性もご健在です。
山越さんの心の奥底にある「俺は一家の大黒柱、社長だぜ!」という自負心が、妻の給与明細でこっぱみじんに砕け散った。昭和の価値観は竹の根のしぶとさをしのぐ、おそろしい代物なのです。
「妻の稼ぎと夫のストレス」の関係を明かした、おもしろい研究があります。日本同様性別役割がしぶといアメリカの6035世帯を、15年間にわたって追跡したデータを使い、妻の相対所得と夫の心理的苦痛の関係を明かした研究です(厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書」)。
妻が専業主婦で夫が唯一の家計の担い手の場合、夫は「家族を養わなくてはいけない」というプレッシャーからストレスを感じていました。しかし、妻が働いてお金を稼ぐにつれて夫のストレスは徐々に低下。妻の稼ぎが夫の家計負担感を漸減させることが分かりました。ところが、です。妻の世帯総収入が40%を占めた時点で、夫のストレスレベルに変化が起こります。それまで下がり続けていた夫のストレスが一気に上昇に転じたのです。
つまり、「夫6:妻4」の稼ぎが夫婦円満の黄金比。「おんぶして抱っこ妻」はいやだけど、妻におんぶされるのも耐えられない。理想はあくまでも「副社長妻」。2歩下がって社長を支えてほしい。自分の立場をわきまえてほしい。3歩から2歩へと前進したものの、性別役割問題は実に根深い問題なのです。
女性からすれば、「いったいいつになったら女性の自立を認めるつもりなんだろう?」と苦言を呈したくもなります。「そんなこと思っているから、女性活躍後進国なんだよ?」と。
しかし、しかしです。なんと件の調査では「時代の新風」を感じる結果が、確認されているのです。
結婚したときから妻の稼ぎが夫を上回る“格差婚”では、「妻の稼ぎと夫のストレス」の間に関係性は認められませんでした。妻がいくら稼ごうとも天下泰平です。
「格差婚」という言葉自体、性別役割の象徴ですが、当人たちは世間より3歩前を歩いている。ジェンダーフリーとは、女性だけでなく、夫の心を解放するやさしい概念です。
下克上する妻が増えれば、案外夫たちが住みやすい世の中が到来するかもしれません。
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December 30, 2022 at 05:00AM
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