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政府の観光需要喚起策「全国旅行支援」が年末年始の一時中断を挟んで再開されてから１カ月余り。宿泊や飲食などのサービス消費が堅調に推移している。支援は追い風になっているが、一方で旅行業界からは「手続きが煩雑で現場を圧迫している」との悲鳴も。あえて支援事業への参加を見送った宿泊施設もある。（大竹直樹、長橋和之）
「もし申請に不備があれば割引が適用されず、旅行代理店が自腹で値引き分を負担しなければならなくなる」と明かすのは、千葉県松戸市の旅行代理店、京葉ツーリストの入木田健一代表。旅行支援による値引き分を後日返金する対応を取っているが、中小の代理店は手続きの事務作業に追われる日々だという。
全国旅行支援は国から財政支援を受けた都道府県が実施している。再開後は旅行代金の割引率が昨年実施時の４０％から２０％に縮小され、交通費込みパック旅行への支援上限は５千円、宿泊だけか日帰り旅行の場合は３千円。買い物などに使えるクーポンを平日は２千円分、休日は千円分受け取れる。支援の適用を受けるには新型コロナウイルスワクチンの３回接種か陰性証明の提示が条件だ。
先着１００万人を対象にクーポンを２千円上乗せしている千葉県など、独自の追加補助を実施している自治体もあり、支援には地域差がある。
神奈川県内にある旅行代理店によると、宿泊だけで３、４枚の申請書を提出しなければならず、「旅行先の都道府県によってルールが異なることも現場に混乱を招いている。お客さまは割引が当たり前となっているので、やめるにやめられない」（担当者）という。
航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏は「観光支援事業『Ｇｏ Ｔｏ トラベル』の給付金を不正受給した疑いが浮上したことで今回はチェックが厳しくなり、旅行代理店が立て替えた割引分の振り込みが遅れている」と指摘。「中小の代理店の経営を圧迫している」との見方を示す。
宿泊施設側の負担軽減につなげるため、支援再開後は買い物などに使えるクーポンが原則電子化されたが、事業参加を見送った施設もある。神奈川・箱根のリゾート旅館「箱根藍瑠（あいる）」もその一つだ。
「クーポンのアプリをスマートフォンにダウンロードすることに手間取る年配の人もいる。全国旅行支援は利用客の満足度に必ずしも直結しないと思う」
渡辺健支配人は再開後に不参加とした理由をこう語る。インバウンド（訪日外国人観光客）の増加で５月まで予約状況はほぼ満室。「旅行支援もずっと続くわけではない。いつまでも支援に頼っていられない」との思いもあったという。
全国旅行支援が「業界の分断」を招いているとの声もある。群馬県内で中小の旅行代理店を経営する男性は「中小はあまりメリットがない」と強調。「大手の代理店は各都道府県事務局に職員を出向させ、人件費や運営費で潤っているだろうが」と業界内の不公平感を口にするが、旅行大手のＪＴＢは「受託事業に関することなので回答できない」としている。
観光庁によると、３月末までをめどに全都道府県で支援を継続できる予算を確保している。予算がなくなり次第終了となるため、支援期間は都道府県でばらつきが出る見通しだ。支援の延長については「２、３月の旅行需要をかんがみ、今後の取り扱いを検討する」（観光庁）という。
５月には新型コロナの感染症法上の位置づけが「５類」に移行し、マスク着用についても３月１３日から原則、個人の判断に委ねられるなど、社会の状況はコロナ前に近づきつつある。旅行支援の延長について鳥海氏は「旅行業界では現場の混乱もある。４月以降も支援を延長するのであれば、制度の運用や周知の早期化などを早急に見直すべきだ」と話した。
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February 15, 2023 at 05:49PM
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